96 研究系及び研究施設の現状
森 田 紀 夫(助教授)
A -1)専門領域:レーザー分光学、量子エレクトロニクス
A -2)研究課題:
a)ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップの研究 b) 液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップの研究:三重項準安定励起状態のヘリウム原子のボーズ・アインシュタイン 凝縮の実現に向けて,よりいっそう多くのヘリウム原子をより低温で蓄積することを目的とした装置の設計・製作 に全力を注いだ。また,レーザートラップ中により多くのヘリウム原子を捕獲する方法としてビーム断面強度分布 がドーナツ型のレーザー光を用いることを提案しその計算機シミュレーションを行った結果,この方法が有効であ ることが予測された。これらの装置や方法による来年以降の成果が期待される。
b)液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光:液体ヘリウム中に置かれた原子やイオンは泡や氷球を作ってその 中に納まっていると考えられるが,それらの原子やイオンのスペクトルを測定することによって泡や氷球の状態さ らには液体ヘリウムそのものの性質を微視的に調べることが出来る。本年は,液体ヘリウム中のユーロピウム原子 のスペクトルのフォノンとロトンによるサイドバンドの観測を試み,現在までにフォノンサイドバンドが観測され ている。ロトンサイドバンドについては未だ観測には至っていないが,さらにより低温における観測を引き続き試 みている。また,前年に行った気相のカルシウムイオンとストロンチウムイオンのヘリウム原子との衝突における 超微細構造間の遷移断面積を求める実験をさらにバリウムイオンについても行ない,このデータのイオン種の範囲 を広げた。一方,これらのイオン(カルシウム,ストロンチウム,バリウム)と水素分子との衝突における超微細構造 間の遷移断面積を求める実験をも行い,衝突相手がヘリウム原子の場合とは全く異なる振る舞いを示すことも見出 した。
B -1) 学術論文
Y. MORIWAKI and N. MORITA, “Spectroscopic studies on Yb+ ions in liquid helium,” Eur. Phys. J. D 13, 11 (2001). B. KETZER, T. VON EGIDY, F. J. HARTMANN, C. MAIERL, R. POHL, J. EADES, E. WIDMANN, T. YAMAZAKI, M. KUMAKURA, N. MORITA, R. S. HAYANO, M. HORI, T. ISHIKAWA, H. A. TORII, I. SUGAI and D. HORVATH,
“Collisional quenching of metastable states of antiprotonic helium by hydrogen and deuterium molecules,” Eur. Phys. J. D 13, 305 (2001).
B -5) 受賞、表彰
森田紀夫 , 松尾学術賞 (1998).
研究系及び研究施設の現状 97 B -6) 学会および社会的活動
学協会役員、委員
応用物理学会量子エレクトロニクス研究会幹事(1984-1987).
C ) 研究活動の課題と展望
ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップについては,これまでの研究によって得られた多くの知識と経験を基にして,準安定ヘ リウム原子気体におけるボーズ凝縮の実現を目指したい。液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光については,当面 ロトンサイドバンドの観測に力を注ぎたい。